▼当院消化器内科 荒川医師の早期胃癌の論文が
　Journal of Clinical Medcine, Special issueに選出されました。

当院消化器内科の荒川典之医師の早期胃癌に関する研究論文が消化器がん領域で権威ある「Journal of Clinical Medcine」の特集号に掲載されました。

論文
Clinical differences in c-Myc expression in early-stage gastric neoplasia: a retrospective study based on the WHO classification

近年遺伝子解析が盛んに行われ、胃癌の分子病型が明らかになってきました 。筆者らは、2017年に、胃粘膜内上皮性腫瘍のCopy Number Alteration (CNA)解析により、癌の早期の状態に関連すると思われる遺伝子を複数指摘しました。その中でもc-Mycの増幅は、早期の段階から起こる遺伝子異常であり、Driver geneである可能性を報告しました 。

c-Mycは、様々な癌で発現異常が指摘されている癌遺伝子の１つです。発癌や癌の進行に関わる遺伝子として知られています。c-Mycは無秩序な細胞増殖や血管新生の促進、転移の促進、嫌気性代謝の促進、ゲノムの不安定化など様々な生物学的現象へ関与しています 。

胃粘膜内上皮性腫瘍のうちc-Mycの発現を伴う病変は、より悪性度の高い病変と推測できますが、WHO分類に焦点をあてたc-Mycの発現を検討した報告はこれまでなされていませんでした。筆者らは、WHO分類に基づく胃粘膜内上皮性腫瘍のc-Myc発現の差異を明らかにすることを目的とし、研究を行いました。

研究の結果、WHO分類に基づく胃粘膜内上皮性腫瘍のc-Myc発現には、臨床病理学的に明確な差異があることが示されました。この結果から、c-Myc陰性low grade dysplasia (Dormant LGDと命名)は、c-Myc陽性low garde dysplasia (Aggressive LGDと命名)やhigh grade dysplasia、intramucosal adenocarcinomaとは異なるカテゴリーに属する腫瘍群であることが示唆された。

c-Myc発現は、発癌早期に関与するkey elementであることが推測されました。 上部内視鏡検査で生検をし、胃癌と診断された場合、c-Myc染色することでAggressive (悪性度が高い)か否かを判定する補助ツールとなりうると考えます。

論文掲載先　https://www.mdpi.com/2077-0383/11/3/544