日本における子宮がん(頚がん+体がん)の年次死亡率は、かつては胃がんに次いで多かったものの、約50年間に半減し、1998年には人口10万人対で7.8人と、肺がん、肝臓がんよりも低くなってきております。 このことは、子宮がんの集団検診・治療法が比較的確立されつつあることと関連しているのですが、症状が出現してから受診された患者さんには進行がんが多く、この場合依然として予後不良でありますので、無症状であるうちに子宮がん検診を受けていただくことが重要だということを強調したいと思います。
初期がんにおいては無症状ですが、この時期に発見すると子宮下部の円錐切除術という簡便な子宮温存手術のみで治癒することが多く、患者さんにとっても非常に有利であるため、何もなくても1〜2年おきの検診を受けることをお勧めいたします。
不正出血などの症状が発現してから発見された子宮頚がんは周囲組織に浸潤している場合が多く、子宮・周囲組織・リンパ節摘出手術が施行されますが、さらにがんが進行した例では放射線治療・化学療法が行われ一定の効果をあげております。
しかしながら子宮頚がん進行例では、膀胱・直腸へ浸潤し、排泄機能を低下させ、5年生存率は約13%程度と予後も不良です。治癒に至ったとしても患者さんの負担は大きくなりますので、検診の重要性を強調してしすぎることはありません。
閉経後に多く発生するといわれており、リスク因子として、未妊未産の女性・肥満・糖尿病・高血圧・エストロゲン(女性ホルモン)・乳がん既往などと関連があるとされております。
症状としては不正性器出血であり、診断は子宮内膜の細胞診・組織診で行われます。ただし、子宮口が狭い女性の場合、子宮内腔の操作に疼痛を伴うことがあり、それで婦人科受診をためらい、発見の遅れにつながることがあります。
竹田綜合病院産婦人科においては、患者さんのご希望により麻酔下での検診や、内診台に抵抗を感じられる患者さんに対してMRI検査などを検討するなど、ご相談に応じさせていただきたいと存じますので、気になる症状を放置なさらないようお願い申しあげます。
子宮体がん(子宮内膜がん)が診断されたら、子宮全摘手術や進行例では化学療法が施行されます。
卵巣は沈黙の臓器といわれており、通常は左右とも親指大程度の大きさですが、これが赤ちゃんの頭の大きさの卵巣腫瘍になるまで、患者さんが異変に気づかないといったことは産婦人科の世界では決して珍しいことではありません。したがって卵巣がんは早期発見しにくいと一般的にいわれております。
エコー検査その他の画像診断が発達している現在、卵巣がんの早期発見は以前よりは可能になってきていると考えます。ただし、そのためには患者さんに自発的に1年に1回程度、「卵巣をチェックしてほしい」と産婦人科の門をたたいて頂くことが必要です(このときに子宮がん検診を同時施行することも可能)。
残念なことに現状においては、公的な婦人科がんスクリーニングに卵巣がん検診は含まれておりません。例えば、市民検診で子宮がん検診を受診された女性でも、卵巣に腫瘍があるかどうかはチェックされていないということです。
エコー、CT、MRIなどで卵巣がんが判明した場合、手術+化学療法が治療の主体となります。当科においては多くの患者さんに適した治療を心がけております。
子宮頚がん、子宮体がん(内膜がん)、卵巣がんの検診は1部の例外を除けば、比較的短時間で簡便に、低侵襲でスクリーニングすることが可能です。 産婦人科とふだん縁遠い女性こそ、1年に1回程度の卵巣を含めた検診を受けてください。